映画 「陰陽師0」
才能と美しさには、嫉妬メラメラ、恨みドロドロがつきまとう。
陰陽師の新しい映画が公開されると聞いて、何も考えずに映画館へ。
主演は、山崎賢人。今一番忙しいアクション俳優。
俺が見たのは「ゴールデンカムイ」と「狂武蔵」だけですが、
「キングダム」とか「ジョジョ」も彼だそうで、すごい兄ちゃんですなあ。
野村萬斎主演の二部作を劇場で見た俺としては、彼の立ち振る舞いが気になるところ。
相棒の源博雅を演じるのは、染谷将太。…おお!
彼が晴明でもいいんじゃいかと思うくらい、ふてぶてしい演技ができる男なので、
これは、面白い組み合わせなんじゃないかと思いました。
監督・脚本は、佐藤嗣麻子。
彼女は、「エコエコアザラク」で、菅野美穂を悪役でブレイクさせた実力者。
山崎貴監督とはご夫婦なので、本作も、VFXにご注目。
原作者の夢枕獏の熱いラブコールにより、新たなる映像化が実現。
出演者は、板垣李光人、奈緒、國村隼、小林薫、北村一輝、村上虹郎、安藤政信。
うっはー、登場した途端に、いい奴か悪い奴か、すっげえわかりやすそう。
ナレーションは、津田健次郎。一番出まくりの声優さんですな。
主題歌は、BUMP OF CHICKEN。
さて、映画ですが、キレイで美しい作品に仕上がりました。
山崎君は、容姿端麗で、美形ですねえ。
染谷君も、繊細な感情を持つ青年を、丁寧に演じました。
物語は、陰陽師を目指す学生たちが学ぶ、陰陽寮が舞台。
早い段階から、才能に嫉妬し、出世欲ムラムラの、イヤ~な雰囲気。
やはりこういう環境では、ふてぶてしいことが、一番の武器なのかも。
晴明は、人に対して忖度しない、素直で正直なキャラ。
はっきりものを言うけど、裏表がないので、嫌味がない。
博雅は、しっかりしていて物事の道理がわかっているけど、
変に気取らず、素直な目で相手を見ている、誠実なキャラ。
晴明がボケると、博雅がツッコむ。
お互いに遠慮しない関係が、いいバランスを生む。
「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」の二人もそうでしたが、
出会った時から、初めて言葉を交わした瞬間から、何かを感じ取っている。
野村萬斎と伊藤英明のコンビよりも、こっちの方が魅力的かも。
男の俺が見ても、清々しくて、気持ちがいい。
俺が一番注目したのは、殺陣です、
野村萬斎の時もそうでしたが、殴る蹴るといった、ダイレクトな攻撃はせず、
ひら~りと交わして、相手の力を利用して、倒したり、同士討ちさせたりするスタイル。
これって、合気道や柔術みたいな技ですよね。
まさに、怨霊に立ち向かう時に、もっとすごい怨霊を呼んだりする戦い方に近い。
自分は、気の流れる要の位置にポジショニングして、流れをコントロールする。
そのためには、常に冷静でいなければならないし、クールなキャラを保たねばならない。
映画を見ればわかりますが、彼には、家族に対してトラウマがありました。
悪い奴は、そこを攻撃してくる。責めて攻めて、弱味を握ろうとする。
晴明は、不愛想でひねくれ者だけど、事実に対して、実に素直。
だから、自分が間違っていたとわかったら、すぐに思考を切り替える。
その柔軟さが、また、彼の魅力でもあるんですね。
博雅は、ワトソンみたいに振り回されることが多いですが、
ここぞという時に、ストレートに行動できる、フットワークを持っている。
晴明のことを悪く言われると、本気で怒ったりする。
あまり怒らない人でも、自分が大切にしているものを侮辱されると、スイッチが入るんですね。
野村萬斎の映画では、夏川結衣が妖艶な怪演を見せて盛り上げてくれて、
そこに小泉今日子があんなことになって、ほうほう、そんな手がありましたか、という展開でした。
さて、本作は、どんな戦いになるんでしょう? 気になる方は、劇場へ。
特撮シーンは、優雅でしたねえ。
まるでポケモンバトルみたいに、光鮮やか、彩りが素敵キラキラ。
生ぐさい感じが一切しないところが、エコな感じでよろしいかと。
染谷君を初めて映画館で見たのは、確か、「パンドラの匣」でした。
あの時の、療養患者のようにうつろな存在感を今でも覚えています。
「ヒミズ」「東京島」「寄生獣」「初恋」「きみの鳥はうたえる」の時の、
脱力感のある、ふてぶてしい独特な存在感もまた、面白い。
色んな表情や演技ができる、いい俳優だと思います。
ちなみに彼の奥様は、菊地凛子。彼女もまた、ふてぶてしい演技に定評があります。
「カムイ外伝」で彼女をいたぶったのが、伊藤英明。
彼は「悪の教典」で、ヒミズカップル染谷将太&二階堂ふみをいたぶってますなあ。
きっと、てめえこのやろう伊藤、という感情をエンジンに変えて、
染谷君は、この難しい役どころを熱演したんでしょう。 (←そんなわけねえだろ)
で、実際、染谷博雅の方が、俺としては何倍もよかった。
それだけに、彼がいずれ伊藤博雅になるのはイヤだなあ、と。
もしかすると、よほどのヒドい目に遭えば、ああなるのかも…
よし、ここはひとつ、ゴールデンカムイ外伝で、一緒に奴を倒そうぜ!(もうええわ)
平安時代は、一部の特権階級だけが優遇される、ピラミッド社会。
だから、出世できない者は、人間として扱ってもらえない。
上に行けば行くほど、自分の存在を脅かす者を、本気で潰すようになる。
能力や技術に優れた者は、自分を守る強さも備わっていないと、
才能ゆえに、命を失うことになっちゃう。
安倍晴明は、出世には全く興味がない。
彼の心の中には、違うものが存在している。
それを、博雅との出会いによって、一緒に解決していくのだ。
ヒロインを演じるのは、奈緒。
彼女の映画は、「先生私の隣に座っていただけませんか」「スイートマイホーム」続いて3本目。
俺的にはTVドラマ「雪国」の駒子の印象が強いので、まだ、彼女の魅力全開という感じではないかな。
それでも、優美な衣装に健康的なかわいらしさは、スクリーンに映えます。
山崎君29歳、染谷君31歳、奈緒29歳。
同年代の、エネルギッシュな共演を、目に焼きつけておきましょう。
権力がある者にも、弱点がある。
帝(みかど)をはじめ、上流階級の者が恐れるのは、祟りと穢れ。
目に見えない恐怖や、どうすることもできない天変地異の前では、人間は無力。
だから、占い師や天気予報士、呪術を使える者に需要があるのでしょう。
才能は、天から与えられる宝物。
能力は、磨けばどんどん光を増していく。
楽しければ、それでよし。
苦しいならば、違う道を探すのもよし。
問題なのは、実力がないのに嘘をつく行為であり、
自分より才能のある者に嫉妬して、貶める行為である。
人に嘘をついて、自分に嘘をついてまで、理不尽な生き方をする必要は無い。
俺は、そういう人生を送りたくなくて、最後まで毒される前に、環境を変えまくりました。
その代償として、未だに転がり続けていますが、しぶとく生きております。
心にモヤがかかった状態では、物事の本質を見極めることはできない。
立ち止まって、無用な荷物を断捨離し、地に足をつけて、考えよ。
澄んだ心で、透き通った瞳で、しかと見よ。
余計な雑音に惑わされずに、耳をすませて、しっかり聴き取るべし。
…目の前にいるあいつに、そうさせている者の正体を見抜け!