映画 「オッペンハイマー」 | 映画熱

映画 「オッペンハイマー」

思考が爆発した瞬間に、新しい世界が生まれる。

 

 

ようやくパソコンが復活したので、執筆を再開します。

 

(やっぱり、ケータイでは、思うように書けないもんで)

 

この映画が公開されてから、かなりの時間が経ってしまいましたが、

 

それでも、余韻がまだ新鮮に残っています。

 

 

 

製作・監督・脚本は、クリストファー・ノーラン。

 

原作は、カイ・ハード&マーティン・シャーウィンによる伝記。

 

(ハヤカワ文庫って、海外のSF小説がメインのアレですよね)

 

本作は、アメリカ映画ですが、主演のキリアン・マーフィーをはじめ、

 

エミリー・ブラント、トム・コンティ、ケネス・ブラナー、ゲイリー・オールドマン…

 

うっはー、コテコテの、イギリス&スコットランド系が大挙出演。

 

中でも、フローレンス・ビューが、一番印象に残りました。

 

(彼女は、「君たちはどう生きるか」の、キリコの吹替も担当したそうで)

 

アメリカ勢は、マット・デイモン、ケイシー・アフレック、マシュー・モディーン、

 

デヴィッド・ダストマルチャン、ロバート・ダウニーJr.といった顔ぶれ。

 

 

 

 

 

内容は、世界で初めて原子爆弾の製造に成功した、J・ロバート・オッペンハイマーの物語。

 

日本人としては、原爆の話というだけで、不快な気持ちになりそうですが、

 

俺としては、映画を見なければ、批評する資格もない、という主義なので、

 

とにかく、まずは映画を見てから考えよう、という思いを抱いて、映画館に行きました。

 

 

 

なるほど。

 

これは、勉強になる映画です。

 

面白いかどうかは、人それぞれでしょうが、

 

映画を見る限り、悪い印象は受けませんでした。

 

 

史実をもとにしているので、ネタバレもなにも関係ないのでお話ししますが、

 

当初は、ナチスを標的として開発していたのに、ドイツが降伏してしまったもんだから、

 

振り上げた拳の下ろし場所として、日本が標的にされてしまった、ということ。

 

日本側から見たら、とんでもないですが、

 

アメリカにはアメリカの事情があり、他の国との軍事バランスも考慮しての戦略。

 

そこを、丁寧に、潔く描いている点を、俺は評価したいです。

 

 

 

頭脳が優秀な人は、常に思考を怠らない領域があって、

 

生活の全てのことから、あらゆるヒントを得ている。

 

凡人にはわからないことを、天才には一瞬で理解する。

 

そして、それを学術的に説明できる能力があってこそ、研究する機会が得られる。

 

 

オッペンハイマーは、科学者として仕事をしている以外は、いたって普通の男のよう。

 

家族や友達を大事にして、女性にもモテる。

 

その、分け隔てない彼の性格が、“赤狩り”という、面倒なトラブルを呼び寄せてしまう。

 

彼自身は共産主義者ではないけど、同じ人間として、敬意を払っている。

 

世の中をずる賢く渡れない、彼の誠実さがあればこそ、多くの仲間に恵まれたんじゃないかと。

 

 

 

どの国でも、戦争によって、科学技術が進歩しているのは事実。

 

飛行機、戦車、武器、医療など、その恩恵を、現代を生きる人が受けているのもまた、事実。

 

今を生きる人が、戦争をした者を批判するのは簡単だけど、

 

たまたま戦時中に生まれ、戦争に携わらなければ生きられなかった人の境遇を考えれば、

 

おのずと、多面的、立体的な見方をして、熟考する必要性を感じるのではないでしょうか。

 

 

本作は、実に、もってこいの教材だと思うんですね。

 

 

「ゴジラー1.0」は、ゴジラが水爆実験で生まれたことを語っていない。

 

本作では、オッペンハイマーが、水爆実験を憂慮している場面が出てくる。

 

両者とも、アカデミー賞で評価された、名作として語りつがれる1本となりました。

 

 

俺としては、本作を見てから、ゴジラを見たかったけどね。

 

 

 

 

 

人は、誰もが、才能を秘めて、生まれてくる。

 

その才能が開花する人と、埋もれて抹殺されてしまう人。

 

しかし、植物のように、伸びようとする才能の力は、誰にも止められない。

 

それはきっと、その時代を生きる者たちにとって、必要な力なのだ。

 

 

人が、何かをする。

 

喜ぶ者がいれば、悲しむ者もいる。

 

誰かが幸福になれば、誰かが不幸になる。

 

誰かが勝てば、誰かが負けるように、常にこの世は、表裏一体。

 

勝った者が正義じゃなく、負けた者が悪でもない。

 

誰も悪くないし、誰も正しくない。

 

 

 

 

クリストファー・ノーラン監督は、イギリスとアメリカのハーフ。

 

きっと、いいご両親だったのでしょう。

 

知的で、バランスのいい思考力を、映画の世界で思う存分発揮しています。

 

 

本作は、3時間もある大作ですが、こめられたメッセージは、いたってシンプル。

 

科学は、人類にとって何なのか。

 

血の通ったひとりの人間として、科学者オッペンハイマーを見つめて欲しい。

 

 

自分だったら、どうするか。

 

自分が彼を支える立場だったら、敵対する立場だったら…

 

 

 

 

フローレンス・ビューが演じるジーンは、精神科医で、共産党員で、彼の最初に愛した女。

 

彼は、ことある毎に彼女を思い出し、彼女との関係を深く考える。

 

彼が、ひとりの人間として立つために、実に多くの人が影響を与えているのだ。

 

 

彼には、科学者という、優れた資質があった。

 

ユーモアを交えたやり取りの中に、人間としての魅力が垣間見える。

 

人望があるからこそ、仲間が増え、探求心が生まれ、新しい分野が成長していく。

 

信念こそは、苦悩を乗り越える、一番の起爆剤。

 

未知の扉の向こうに何があるのかを、確かめずにはいられない。

 

 

良くも悪くも、色んなことを学べる映画です。

 

自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分の頭で考えましょう。

 

 

…人間の心もまた、宇宙で唯一無二の、かけがえのないもの。